
糸数 七重
いとかず ななえ Itokazu Nanae 日本薬科大学講義内容
漢方処方学
現代日本で実際に治療に頻用されている漢方処方の中から、桂枝湯・葛根湯・麻黄湯の“風邪に対する代表的な処方”、当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸の“婦人科疾患に対する代表的な処方”、その他、水滞(水分の代謝やバランスの異常を包括する概念)や気(呼吸、および生命活動の基礎的な機能を包括する概念)の異常に対して用いる処方をそれぞれいくつか例として取り上げ、漢方の特徴的な診断概念である「証」の考え方、およびそれに対する漢方処方の処方構成の考え方について解説します。
漢方古典解説
漢方の本来の構造を学ぶには、古典について正確に理解することが重要です。
この講義では「漢方の三大古典」と呼ばれる『黄帝内経』『神農本草経』『傷寒雑病論』について、その成立過程や内容について解説し、漢方の基礎的な考え方の立脚点の理解を目指します。
さらに唐代の『千金方』『千金翼方』『外台秘要』、宋代の『和剤局方』、明代の『万病回春』等の、各時代の代表的な医書の内容の変遷を概説し、人体や治療に関する考え方が時代とともにどのように変化し、それが現代の漢方治療にどのように反映されているかを俯瞰できるようにします。
漢方症例解説5 高齢者に多い症状に応用できる漢方処方
加齢に伴って発症しやすい疾病や症状、複数の症状を同時に抱えること、かつては「ちょっとした不調」だったものが生活に多大な影響を及ぼし得ることなどは高齢者の健康問題の特徴です。複数の生薬から構成される漢方処方は、これらの問題に対処し、高齢者の健康状態の“底上げを図る”のに適しています。この講義では、高齢者の健康トラブルの代表的な症状とそれに応用できる漢方処方(八味地黄丸、牛車腎気丸、麻子仁丸、六君子湯、麻黄附子細辛湯、補中益気湯、半夏厚朴湯、抑肝散など)、およびその適切な選び方について解説します。
プロフィール
- 日本薬科大学漢方薬学分野講師
- 中国医薬大学都築伝統薬物研究中心訪問研究者
- 文部科学大臣認定職業実践力育成プログラム・日本薬科大学漢方アロマコース担当
経歴・実績
東京大学薬学部卒、同大医学系研究科博士課程修了。慶應義塾大学ツムラ寄付東洋医学講座助手、国立医薬品食品衛生研究所生薬部研究員、武蔵野大学一般用医薬品教室助手・助教を経て現職。専門は漢方・生薬薬理、社会薬学、統合医療。
現在の活動やPR
2017年より日本と台湾を往復しつつ漢方・中医・薬膳の研究・調査・教育に従事。
受講者へのメッセージ
漢方は現代における医療のツールとして非常に重要なものですが、一般的なサイエンスとは異なった論理体系を持つものでもあります。
『漢方古典解説』では、サイエンスに対して漢方理論がどのような立場にあり、どのように受け止めるのが適切なのかを歴史の中から理解できるようにお伝えします。
また、『漢方処方学』では、漢方処方の処方構成について、シンプルで応用のしやすい基礎的な考え方を、『漢方症例解説5』では、実際に漢方処方が使用されがちな症状を上げながら、どのように漢方処方を選べばよいかをお伝えします。
現代のサイエンスと異なる“もうひとつの理論体系”をニュートラルに捉え、より健康的な生活を目指すための考え方をお伝えできればと思います。